フォト
無料ブログはココログ

« インクイジター・イノウエ | トップページ | ヤマトミツバチ »

2017年6月 1日 (木)

島国に宇宙船が来なくなる日。

 監督作品"Blade Runner 2049"(2017)が間もなく島国にもやってくるという、デニス(ドゥニ)・ヴィルヌーヴ監督の"Arrival"(2016)を観てみました(流した、×)。

 先日の週末金曜日、さらりまんのメッカ(でもなんでもないけど今は)新橋で、同好の士(年下の男性)と約束していた渡部昇一先生弔い酒を飲んだ。かなり遅くまで飲んでいたらしい。

 翌週メールが来た。相手が新宿駅に着いた頃には終電までさほど時間もなかったそうだ。そのまま素直に電車に乗って帰ればよかったものを、席上あたしが話題にしたという"Arrival"(邦題恥ずかしいから書きたくないけど「メッセージ」)が、駅前の映画館でかかっていたらしい。次回(深夜興行)の時間がちょうどよかったので、そのまま徹夜で観たそうな。

 こちら、飲んでいた終わりの方は、どうやって勘定したかも含めまったく覚えちゃいないのです。おそらく新聞で監督インタヴューを読んでいた"Arrival"について、「サイファイは死んだ」(ニーチェに倣って正しく言えば「サイファイはずーっと死んでいる!」ですが)とか、チャンとかリュウとか、ストツーぢゃねえんだから、大陸のチ●ン出しゃばりすぎ、ハヤカワがダメすぎ、ハリウッドが大陸に媚売りすぎ、グレッグ・イーガン(豪州作家でUSメディアからものすごく差別というか無視されている)作品でも映画にしてみろこら、とか、「観てもいない映画」にえらそうにくだまいていたのだろう。あと「大森望死ね」は間違いなく言っていたはず。

 メールには、ご丁寧にクリーン版感想(ネタバレなし)と、ネタバレ感想が書いてあった(らしい、後者はこれから読むので中身を知らない)。なんだか感動したくさいことが書いてあったので、そのまま(PC上の)ゴミ箱に直行という手もあったが、「原作を読んでから観るべきですね」とか、「読んでいない本について(略」を読めとしつこく言っていたにも関わらず、まだ読んでいない相手から一番言われたくないことが書いてあったので、かちんときた(あれ? 「読まなくて」いいんだよね?)。

 「十年はええんだよ!」(えーと、ストツーぢゃなくて、ヴァーチャだったっけ?)

 サイファイについて、あたしに意見するとかありえない。もちろんチャンとかリュウとか、どんな奴らかさえ知らないし、だから読んでいるわけないし、これからも一生読まないだろう。あたしはそこまで暇ではない。(ただしチュンリーなら許す、関係ないけど。パイ・チェンはちょっと・・・)

 とはいえ、「早く観てください」としつこいので、しょうがないから仕事サボって(休みを取って!)、お昼頃に近所の駅前のシネコン行ってまいりました。

 ネット予約して初めて超ラッキーだったと気が付いたのは、毎月ついたちは女子ーズでもない、ジジババでもない、ただの野郎のおっさんも差別されずに映画半額デーなんだそうだ。かなり大きな駅前の映画館だったが、それでも客はスカスカ。平日昼に映画館にいるさらりまんとか、もちろんろくなもんじゃありません。

 以下、他の人に観てほしいとか思わないので、ネタバレ全部あります。

 まず褒めるべきところ。同じ監督の"Blade Runner 2049"に期待しているこちらとしては、ちょっと冗長というか間延びしてるかなあ、という点はいくらかあったものの、物語(プロット)以外で「こらあかん」という部分は見当たらなかった。マイケル・ベイのウ●コ作品とまるで違い、とてつもなく限られた予算(大半は人気俳優がギャラでもっていったんだろう)しか与えられなかったことが手に取るようにわかるものの、映像を大事にする感じが伝わってくる。音響・サントラは、個人的には中華風のところがやたら耳障りで気に食わなかったが、全体として悪くはない。
 
 "Blade Runner"(1982)オリジナルを監督したリドリー御大と比較され、あちらのサイファイ・ポリスからディスられ、悲惨な目にあうようなことはないだろうと安心した。むしろ予告編でやっていた御大の"Alien: Covenant"(2017)のほうがずっと心配なんですけど、あたしは。ME:Aみたいに「あちゃー、やっちまったなあ」とかならないでほしい。それはともかく。

 新聞の監督インタヴューで「異星人到来ネタ」という点だけは把握していた。A.C.クラークの「幼年期の終わり」(Childhood's End、映画化されていない)的な、"Close Encounters of the Third Kind"(1977、「未知との遭遇」)または"E.T. the Extra-Terrestrial"(1982)的な「疑似宗教もの」(あとの二つは、「現実逃避」という意味で間接的に「信仰」を含意している)はできへんやろ、と思っていた。

 主人公とパートナーがそれぞれ言語学者と数学者であるとわかる時点で、その恐れがないことが判明してほっとした。宗教方面に行ってしまったら、何をどうやっても「幼年期の終わり」以上のものにならないことは間違いない。だからクラークの作品は、クリスチャニティ世界では大名作の扱いを受けている。同じくらい(宗教的な意味合いで)危ないのはハインラインの「異星の客」(Stranger in a Strange Land)くらいでしょうか。どちらも、先にやってしまったもの勝ちの世界で、そのものずばりの「原型」(いずれも聖書などクリスチャニティ世界にあったもの)をどういじくっても、一番シンプルなものには勝てません。

 地球上の十二か所にそれぞれ一体ずつ、巨大な浮遊物体が突如到来する。USはモンタナに。ロシアには二体。シャンハイに一体。島国のホッカイドウにも一体。「ホッカイドウ」は、もちろんカール・セーガン原作の映画"Contact"(1997)へのオマージュだ。こちらの映画の原作がどうなってるか知らないけど。

 それぞれの到来地点の諸国政府と同様に、US政府もこの物体の正体を突き止めようとする。民間エキスパートとして、言語学者と数学者のペアが軍隊によって招集される。異星人(「人」と呼べるかどうか知らんけど)の「言語」を解読して、コミュニケーションを果たせ。「(君ら)なにしにきたん?」という問いに対する答えを引き出すのがふたりのミッションだ。
 言語と数学。この作品が「疑似宗教」ではなく「疑似哲学」の物語であることを示している。少なくとも人類の理解可能な「世界」を記述できるのは、(象形まで含めた)言語と数学しかない。人類の知る限り(あ、トートロジーか)。

 「呼びかけることが可能かどうか」はもちろん、作中でもふれているように「(君ら)」(collective "you")と呼びかけることが可能かどうかさえわからない。「なにしに(why)」は「目的合理的」な知性体であれば通じるかもしれないが、相手が生命体かどうかわからないのは言うまでもなく、目的合理的かどうかもわからない。ここまで、サイファイ好きにとって、わくわくせずにはいられないのではないでしょうか? 悔しいことに、あたしはちょっとわくわくしてしまった。

 だが、その「夢」も即座に打ち砕かれる。相手は「個」を理解し、「目的合理的」であることも判明する(後になって、「死」を理解するらしいこともわかる)。すなわち、この異星の存在たち(もう、「たち」と使えることがおわかりだろう)は、人類がどのように世界を分節して理解(認識)しているか、おおむね理解できるらしい(もっとも、人類が異星の存在の世界認識を「理解」しているかどうかは別問題だ。相手は人類の言いたいことの全部を理解し、かつ、人類は相手の言いたいことの一部が理解できない可能性はもちろんあるし、現にこの物語ではそうだ)。

 そこがあっさり片付いてしまうところが、ちょっと残念だった。最後まで観れば、そうでなくてはいけないことがわかるし、そこを描くつもりのない話であることもわかる。「疑似宗教」を描くのはやめておけ、と思ったとはいえ、「疑似哲学」はやってほしかったなあ、なんだよー、という感じでがっかりしたところ、ではどうやって決着つけるつもりなんだろうと、心配になった。

 答えは超簡単。「中華的商取引」。商売、商売。

 サイファイ的なひねりとしては、異星存在の「時間認識」が人類とは異なるらしいという点が盛り込まれている。そのくらいないと、ほんとに宇宙華僑が到来しただけになる。
 原作の原題"Story of Your Life"がコノートしているように、主人公の女性には愛娘を若くして喪った過去があるらしく、そのトラウマに苛まれているようだ。人類が異なる「時間認識」を手に入れれば、「過去」とか「未来」とかそういった事柄の「認識」も異なるようです。よくわからんけど、それが主人公にとっての「救い」になるということを言いたいのか。

 もっともらしく道教思想あたりを持ち出せば、「死と生」も、「終わりと始まり」も、「陰と陽」も意味をもたない、恒常不変の境地がどうたらこうたら、というエキゾチックな感じが醸し出されるんでしょうね、白人というかクリスチャニティ社会からみれば。

 到来した異星人は、三千年後(おそらく地球時間)に人類の助力が必要になるのだそうだ。そのため、(主人公たちから見た)現在、このちっぽけな惑星上で、宗教とか思想(アイデオロジー)とか、しょーもないことでいがみ合ってる人類が結束し、もうちょっとは大人になってほしいというわけ。十二のパーツに分かれたパズル(数学者が数学者として活躍するのはここだけ!)を合体させれば、異星からの「贈り物」が人類の手に入る。

 十二の物体が到来した諸国のうち、「なにしたいのか早く言えある!」と、異星の存在にいち早くブチきれた大陸国が軍事的敵対行動を開始しようとする。主人公が「贈り物」の一部を用いて、危機を間一髪のところで食い止める。大陸国が異星の存在を撃退しようと思い立つほど強大な実力を身に着けてしまったこの世界は、その大陸国が正気に戻ったので救われる。ありがとう大陸国。シェイ・シェイ。めでたし、めでたし。

 「疑似宗教」、「疑似哲学」でもなく、まさか「疑似朝貢貿易」とか「疑似ポトラッチ」のネタだったとは。

 この映画をいたく気に入ったらしい、上述のメールをくれた彼は、「君の名は。」を繰り返し十回以上観ている前科者だ。よって、この映画もことと次第では爆発的に受ける可能性があったのかもしれません。低予算映画ゆえに大して宣伝もしてないし、かかっている映画館も少ない。まあ、おかげでネトウヨが騒がなくてよかったのかもしれない。

 なお、ホッカイドウについては、二度と触れられない。
 過去、様々なサイファイ映画で、宇宙船がたくさん到来するときは、島国にもちゃんと来ていました。上述の"Contact"は意味あいが違うものの、有名どころでは"Independence Day"(1996)、"War of the Worlds"(2005)など。

 ハリウッドがあの調子なんで、そろそろ島国は到来先からあっさり外されそうですね・・・。
 "Pacific Rim"に続編があるかどうかしらないけど、オリジナルは島国で誰も観ていなかったから、次はカナディアン(外されたことにすごい嫉妬していた)とかインドネシアン(人口が多いので映画業界にとっては魅力)とかが入ってはずされますよ、きっと。
 原作者があれなせいか、この映画でもパキスタンには異星の存在が到来してるのに、インディアには来てないんですね。でも、ハリウッドはそのうちインディアにも媚売り始めるだろう。

 ま、あたしが生きている間は、島国もなんとか一軍から外れないように持ちこたえてほしいけれど無理ですかねえ・・・。
 仕方がないから、自家製ゴジラで何度も島国を踏み潰す、ってそれも輸出しちゃってるしねえ。

« インクイジター・イノウエ | トップページ | ヤマトミツバチ »

ゲーム」カテゴリの記事

コメント

この監督の映画初めてみたのですが、なかなかセンスよろしいんですね。名前から判断するにおフランス系なんでしょうか。最後パーソナルな話に帰結するあたりも相まって、そんな香りがしました。最初の方いた鳥が途中からいなくなっていたのが印象的でした。原作読んでなくても何となく想像できますよね。ブレランへの期待値上げちゃって大丈夫でしょうか。

島国で来たところはどうもハコダテらしいですよ。きっとイカを仲間だと思ったのでしょうね(笑)

イカ、いか(親父ギャグ禁止)・・いいすね(笑)。シャンハイはカニかな(関係ないやん)。モンタナは・・・海がないけど恐竜ちゃんのお骨いっぱい出るから、大昔は大王イカとかいたのかな。

あたしも監督の作品は初めて観たはずです。実はだいぶヴェテランのようです。

「そつのない」が褒めてるのかどうかわかりませんけど、そんな感じですね。"2049"のほうは、本作に比べて予算いっぱいでしょうから、舞い上がってこけないことを願ってます。予告編で観たら、またいきなり半島のあれとか大写しに出ていました。英語のあれな島国人は、ハリウッドではもうはぶられてんですかねえ・・・。 (というよりも、実は監督はケベック生まれのフレンチ・カナディアンなのですね。カナダは少ない人口に悩み、ずっと移民受 け入れに熱心でした。結果CとKにだいぶ侵略されてしまっている。エイジアンに対する抵抗が少ないんでしょうね)

この先、かつて(デヴィッド)リンチ監督が一作(1984)だけ撮ってこけてしまった"Dune"(ハーバート原作)を手掛けるようです。玄人筋からの評価が高いので しょう。

それよりも御大の"Alien: Covenant"(2017)大丈夫だったんすかね。あちらではすでに公開されてるんでしょうけど。あのシリーズだけはスクリーンで観ないと!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2179693/70727555

この記事へのトラックバック一覧です: 島国に宇宙船が来なくなる日。:

« インクイジター・イノウエ | トップページ | ヤマトミツバチ »

ウェブページ

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31