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2016年12月29日 (木)

The Grasshopper Lies Heavy

 サケ(酒)カクテル? いったい何が入ってんだよ。やめろよ、ほんとに。
 
 Amazonオリジナル・コンテンツであるドラマ「高い城の男」は、12月13日に、ようやく大島国帝国(かつて)でも配信がはじまっていた。12月は外地にいることが多かったので、またしてもよそ様からかなり遅れての視聴となります。
 アベちゃんがパールハーバーを訪問する日にこの作品を観るとか、別にキメてるわけでも、らりってるわけでもないあたしには、ただの偶然でしかないのですけど。
 
 フィリップ・K・ディックの原作「高い城の男」"The Man in the High Castle"(1962)は、もちろんガキの頃に読んで、(彼のサイファイ小説の場合は「いつも」ですが)何が何だかよくわからないまま、わかったふりをしていたわけです。あまりに昔のことすぎて、内容も基本的なプロットや、ごく一部の印象的な場面以外はうろ覚え。そのときの本がどこに行ったかもわからず、新刊を買って読み直す暇もないまま、ドラマ視聴に突入しました。
 
 「ブラックリスト」という洋ドラが面白いと教えてくれた、Netflixにはまっている職場の人にも、この作品が視聴開始になっていることを伝えました。彼曰く、ナチスと大島国帝国による世界分断統治のことを「面白そうな設定ですね!」。家族のAmazonアカウントで観てみるそうだ。彼は血液型A型ではないはず(B型かな)なので、社交辞令でもなんでもなく、言った通り間違いなくそうするだろう。
 でも、サイファイ・ノンケな人には「面白そう」なのでしょうが、「もしも歴史が変わったら」ものの極めて陳腐な設定なんすけどね! 外面はめっちゃいいが内面は以下略な血液型A型の私でも、その事実だけは伝えざるを得なかった。そうでなければ、サイファイ・オタクの名が廃るよ。
 
 なぜなら、同工異曲の作品群には、ほんとにしょーもないものが山ほどありますから。いわゆる「歴史改変もの」でも、半村良ちゃんの「戦国自衛隊」(1971)ならまだ面白いが(陸自に補給がないことがあの物語のミソ)、先の大戦を扱っているものには歴史的事実をただひっくり返しただけの「仮想戦争」ものが圧倒的に多くて、まともにつき合う「文芸的」価値のあるものなんてほとんどない。
 つうか「歴史改変」なんて、大陸や半島がやってるやつのほうがずっと派手で、めちゃくちゃで、ある意味「芸術的」。さすが「空気のように嘘を吐く」奴らは妄想のレヴェルが格段に違うと、怒りを通り越して感心してしまう。
 
 次の大戦や局地戦争を夢想した作品だって同様で、サイファイ・ノンケにお勧めできそうなのは、かろうじて矢野徹先生の「地球0(ゼロ)年」(1968)くらい。熱核戦争で壊滅したUS本土の治安を守るため陸自が進駐するという、島国US安保条約の「片務性」を批判する内容で、アイデア一発勝負だけどまあ面白い。ただし先生の作品には、他にしょーもない仮想戦ものも多数ございますので、ご注意。筒井先生にも「東海道戦争」(1965)他いくつかありますけど、読んで怒り出す人がたくさんいそうなんで、ノンケにはお勧めしない(笑)。
 
 このドラマの原作は、たとえ「中学生でも思いつく」歴史改変アイデアに拠っているとしても一発勝負ではない。ディックが完全にらりってるわけでもない時代の作品のためか、彼特有のプロットの破綻も少なく、「易経」などの怪しげな東洋文化を取り入れたりしていることもあって、とても奇妙な味わいが醸し出されており、あちらでは大変受けが良い。「天才」呼ばわりされた知名度のわりには、サイファイ著名タイトルにほとんど縁のない彼の作品の中でも、この作品はヒューゴ賞を受賞している。
 
 その後の彼の作品でも、「戦争」(特に世界破滅戦争)に関するものは極めて多く、それが彼のオブセッションのひとつであったと指摘する声もある。彼が完全にらりっていたらしい晩年近くの作品(注)でも、「ロシアのT-34戦車が世界を救った」(ナチスの世界征服を阻止したという意味)なんて、いきなり突拍子もないセリフが登場したりして、めっちゃらりってんなあ、と思いつつ、らりったあげくに、世界の真実を見抜いちゃってんだろうなあ、とひたすら感心したものでした。
 
(注)「ヴァリス」(1981)かその関連作か忘れた、って「無幻戦士ヴァリス」じゃないよ(スライディング! 優子、愛してました!)。だから、こうなるから早くデジタル化しろよ、ハヤカワ! ってあたしが読んだ「ヴァリス」翻訳オリジナルはサンリオだったけど(絶版)、あの文庫もどこやっちゃったんでしょうね。サンリオ撤退で版権は創元に移ったんだっけ。って今度はまたハヤカワに移ってるのか、ても翻訳が山形かあ。あいつと大森望はキライだからパス。三部作全部だと大変長いので、原著に当たる時間もないあたしは、(サンリオと同じ)大瀧訳の創元版を中古で探すんでしょうね。別にあたしは、これを書いているとき、らりってもいなければ、酒も飲んでいない。ディックの話になると、勝手にハイになるんですよ。
 
 勇んでエピソード1を観はじめたら、いきなり冒頭リドリーの名前が出てきて、のけぞった。
 この作品に限らず、最近映画やドラマ観る前には、なんの予備知識も仕入れないことにしているのですが、え、なんで?
 
 よく考えたら同じディック原作の映画化作品、"Blade Runner"(1982)つながりか。
 んー、出世作。ま、映画としては(実は原作より面白いとも言えるくらい)、ケチつけようないですからねえ・・・。でも島国初日に観に行ったあたしからすれば、ほとんど客が入らなかったせいか、ひと月もしないうちにあっさり上映打ち切りになったことは今でも忘れない。
 信じられないことに、島国では「スキャナーズ」("Scanners"、1981、クローネンバーグのあれ)のほうが人気だったんですよ! お前ら全員目が節穴か? 思い出したらまた島国のことが少し嫌いになった。石垣島にでも移住するか(こらこら)。
 
 んー、大枠の設定はもちろんそのままに近いけど、主人公たちの立場や役割は変えてるんですね。まあ、それはいいか。
 大事なのは、この作品のすべてのカギとなる「作中作」、物語中の歴史改変小説の部分ですね。「高い城の男」が作者とされる、その名も"The Grasshopper Lies Heavy"。原典は知恵の宝庫と呼ばれる「伝道の書」。
 
 傳道之書(別名、コヘレトの言葉、Ecclesiastes) 12:5
"... when people are afraid of heights and of dangers in the streets; when the almond tree blossoms and the grasshopper drags itself along and desire no longer is stirred. Then people go to their eternal home and mourners go about the streets."                                    
「かかる人々は高き者を恐る畏しき者多く途にあり
 巴旦杏は花咲くまた蝗もその身に重くその嗜欲は廢る
 人永遠の家にいたらんとすれば哭婦衢にゆきかふ」
 
 (「その日」が来れば)、みなは高きものを恐れ、道にあるたくさんの恐ろしいものを恐れ、アーモンドの(白い)花が咲き、蝗は地を這い(高く飛べず)、人々の欲望もしぼむ。そして人々は「永遠の家」に赴き、街中には泣き女たちが行き来する。
 
 「破滅の日」のことなんでしょうけど、含意は少なくとも「伝道の書」を一通り読まなければわからないでしょうし(大した分量ではない)、たとえそうしたってわからないかもしれませんし(アーモンドの白い花の解釈には諸説あるらしい)、それはともかく。
 
 一言だけ言うなら、旧約聖書の「伝道の書」から引かれているというところがミソ。
 ナチスが勝利した世界と聞いて、誰でもすぐ想起するように、ユダヤ人たちはどうなるんでしょうか。
 この「作中作」の扱いで、ドラマの出来栄えのほとんどが決まっちゃうんでしょうね。
 ということで、続きを観ることにします。(まだエピソード1も観終わってなかったんかい?!)
 
 あと「酒カクテル」とか、くだらない小ネタやめろよ。原作の「易経」と比べてなんちゅうセンスのなさ。合気道や漢方(易経も含めて、そこらへん全部半島オリジナルなんだそうですけどね)ならまだわかるけど、カクテルに何を入れるんだよ。まったく必要ないだろう。
 と思って調べたら、清酒を使った「サムライ・ロック」とか、「レッド・サン」とか、あんねんて。
 また島国のことが少し嫌いになった・・・。
 

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